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Toggle1. 忙しい上司ほど、伝えなければ伝わらない
「上司は何をしているのか分からない」「忙しそうだけど、結局、現場のことは見ていない気がする」
そんな声を耳にしたことはないでしょうか。多くのマネジャーが、現場のサポートよりも数字の管理や報告資料の作成、他部署との調整など、見えづらい業務に追われています。けれども、その“見えない努力”は、伝えなければ存在しないのと同じ扱いを受けてしまうのが現実です。
実際、ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review, 2021)の調査では、メンバーが上司の仕事や意図を理解している組織では、上司への信頼度が平均で27%高く、離職意向は38%低いことが報告されています。つまり、「上司がどう見えているか」が、そのまま「チームのモチベーション」を左右しているのです。
2. 情報共有とエンゲージメントの関係
ギャラップ社の2023年の調査によると、エンゲージメントが高いチームは、生産性が21%、収益性が22%高いという結果が出ています(Gallup, State of the Global Workplace 2023)。その鍵を握る要因のひとつが、「上司とメンバーの間の明確なコミュニケーション」。
逆に、マネジメント層が「自分の考えを共有できていない」と感じている職場では、従業員のエンゲージメントが40%以上低下しているという報告もあります(ADP Research Institute, 2022)。
「話さない」「見せない」ことが、数字としての損失につながっているのです。
3. マネジメントに必要なのは「聴く力」より「伝える力」
「聴く力」をテーマにした研修はよく見かけます。しかし、今求められているのは、“聴くだけでは足りない時代”を見据えた「伝える力」です。言語化という書籍も多数見かけるようになりましたね。
自分の行動の背景や判断の理由、チームに期待していることを言語化して共有する。それが、チームの信頼を築く最短ルートです。
あるIT企業の社長は、毎週のオンライン朝会で「今、自分が考えている課題と方針」を10分だけ共有するようにしたそうです。すると、半年で社員アンケートの「経営層への信頼度」が68%から89%に上昇。「社長が何を見て、何を大切にしているのか分かるようになった」という声が増えたといいます。
4. チームが息を吹き返す“自己開示”の効果
自己開示とは、弱みや迷いを含めた「人としての姿」をチームに見せること。これは単なる感情表現ではなく、リーダーシップの信頼形成に直結します。
Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」では、高業績チームの最大の共通点として「心理的安全性」が挙げられました。(出典:Google Re:Work, Project Aristotle Findings, 2015)
心理的安全性を高めるうえで、リーダーの自己開示が果たす影響は大きい。上司が「実はあの判断にも迷いがあった」と語ることで、メンバーは“完璧でなければならない”という圧力から解放され、意見が出やすくなる。これが、チームが再び息を吹き返す瞬間です。
5. まとめ:あなたの想いをチームに“見せる”一歩を
経営者やマネジメント層にとって、「伝える力」は業績を動かす経営資源です。とはいえ、大げさに発信する必要はありません。たとえば次のような小さな一歩から始めてみてはどうでしょうか。
- 会議の冒頭で「今、私が一番悩んでいるテーマ」を一言共有する
- 社内SNSで「今日の決断の背景」を短く投稿する
それだけで、チームの空気は確実に変わります。
“伝えること”は、弱みではなくリーダーの責任。あなたの言葉が、チームの迷いを照らす灯になるかもしれません。







