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感情の波に流されないためのコツ感情を客観視するマインドフルネスの技術

組織のリーダーとして、冷静で的確な判断を下すことが求められる場面は多い。しかし、予期せぬトラブルやプレッシャーに直面したとき、感情の波に呑まれ、適切な判断ができなくなることもあるのではないだろうか?

特にマネジメント層においては、自分の感情だけでなく、チームメンバーの感情の動きを把握し、適切に対応する力が求められる。そんなときに役立つのが、「マインドフルネス」の技術である。本コラムでは、マインドフルネスを活用した感情の客観視の方法、経営判断に与えるトラス効果(Trust Effect)、そして実践的なステップについて解説する。

1. 感情が経営判断に及ぼす影響

人間の判断は、感情によって大きく左右される。特に経営判断の場では、焦りや怒り、不安が誤った選択を招くことがある。たとえば、短期的な売上減少に対する焦りが、長期的な利益を損なう意思決定につながるケースも少なくない。

    ダニエル・カーネマンの研究(『ファスト&スロー』)によれば、人は直感的で素早い「システム1」と、論理的で慎重な「システム2」の思考を使い分けている。ストレス下では、システム1が優位に働き、衝動的な決定をしやすくなる。これを防ぐために、意識的にシステム2を活性化する技術が求められる。

    2. マインドフルネスとは?

    マインドフルネスとは、「今この瞬間の自分の状態に気づき、評価や反応を加えずに受け入れる」ことを指す。GoogleやAppleなどの大手企業でも導入され、リーダーシップや意思決定能力を高める手法として注目されている。

      マインドフルネスの基本は、「気づくこと」である。例えば、怒りを感じたときに、「今、自分は怒りを感じている」と客観的に認識することで、その感情に流されることを防げる。この技術を活用することで、冷静な意思決定が可能になる。

      3. 感情を客観視するトレーニング

      感情を客観視するためには、以下のようなトレーニングが有効である。

        (1) 呼吸に意識を向ける
        怒りや不安を感じたとき、まずは深呼吸をする。呼吸に意識を向けることで、自動的な感情の反応から距離を取ることができる。

        (2) 「ラベリング」の実践
        自分の感情を言葉にして表す。「今、焦りを感じている」「不安がある」と言葉にすることで、感情を冷静に捉えやすくなる。

        (3) ジャーナリング(書く習慣)
        1日の終わりに、自分の感情の変化を書き留める。これにより、自分の感情のパターンを知り、より冷静な対応ができるようになる。

        4. マネジメントにおけるトラス効果の活用

        組織の中で、リーダーが感情を安定させ、冷静な判断を下すことは、部下からの信頼を高める要因となる。この「トラス効果(Trust Effect)」は、組織のパフォーマンス向上に直結する。

          マッキンゼーの調査によれば、信頼関係のある職場では、社員のエンゲージメントが向上し、生産性が最大30%向上することが分かっている。リーダー自身がマインドフルネスを実践し、感情に流されない姿勢を示すことで、組織全体の信頼を築くことができる。

          5. 実践的なステップ

          感情を客観視し、冷静な意思決定を行うためには、以下の3つのステップを実践するとよい。

            (1) 毎日5分のマインドフルネス習慣を作る
            忙しい中でも、1日5分、呼吸や感情の観察を行う時間を確保する。

            (2) 会議前に「3秒の間」を作る
            重要な決定を下す前に、意識的に3秒の間を作り、自分の感情をチェックする。

            (3) フィードバックの際にトラス効果を意識する
            部下にフィードバックを行う際は、まずは冷静に状況を把握し、感情を交えずに伝える。

            6. まとめ

            マネジメントにおいて、感情に流されることは避けられない。しかし、マインドフルネスの技術を取り入れることで、自分の感情を客観視し、冷静な判断が可能になる。また、リーダーの安定した感情は、組織全体の信頼関係を強化し、トラス効果を生む。感情の波に流されず、安定したマネジメントを行うために、今日からできる一歩を踏み出してみてはいかがだろうか